第8回いっしょに読もう! 新聞コンクール受賞作

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埼玉県立川越女子高等学校 2年 芦川 琴乃(あしかわ・ことの)

意見を聞いた人:友人

記事見出し

美談演出「誉れの子」 戦死と向き合う 戦後72年 夏⑤(朝日新聞2017年8月16日付朝刊)

授賞理由

父親が戦死したことで「誉れの子」と呼ばれた子供たちが当時を振り返った記事を、埼玉県の芦川さんは選んだ。靖国神社にまつられた父との「対面」を美談に仕立てられ、戦意高揚に利用されていたことを知り、親の死すら戦争に利用され、雑誌や文集に載ったコメントがねつ造されていた社会状況の非情さを感じた。

「ねつ造は現代にも起こりうるのではないか」という友人の意見を聞いた芦川さんは、過去のことと捉えていた記事が、現代にも通ずるものだったことに気付く。報道に拡大解釈や過剰な表現がないか、自分で考えるとともに、友人と意見交換するなど違う視点から情報を見直すことが重要だと結論づけた。

72年前の戦争を伝える記事を、対話を通じて現代社会の問題に結びつけ、自らの今後の在り方にまで考えをめぐらせている点が高く評価された。情報を批判的に読み解く力の重要性、そのために自分以外の視点を持つことの大切さに気付いた点もすばらしい。

(1) この記事を選んだ理由と、記事を読んで思ったこと、考えたことを書いてください

新聞を開くと、「誉れの子」という文字が目に飛び込んできた。私は、その言葉を聞いたことはあったが詳しいことは知らなかったため、興味をもち、この記事を選んだ。記事を読んで、父親を戦争によって失ったことで誉れの子と呼ばれるようになり、親の死を悲しむことができなかった子供たちがいたことに驚いた。親の死すら戦争に利用され、その雑誌や文集が捏造(ねつぞう)されていたその社会の状況は本当に非情だと思った。

(2) 家族や友だちなどにも記事を読んでもらい、その人の意見を聞きとって書いてください

友人は「身内が亡くなったことを悲しむことすら許されず、英霊や散華(さんげ)といった死を美化する言葉で戦争に死を利用することが許された時代背景に心を痛めた。また捏造という汚いやり方に憤りを感じた。しかし捏造は現代にも起こりうるのではないだろうか。どの時代においても報道をうのみにしてはいけない」と言っていた。

(3) 話し合った後のあなたの意見や提案・提言を書いてください

話し合う前はこの記事の中に書かれたことを過去のこととして捉えていた。しかし、友人の意見を聞いて、現代も例外ではないかもしれないと考えた。確かに現代の日本では捏造された記事があるとは考えにくい。しかし、中には拡大解釈されていたり過剰な表現がされていることはあると思う。実際に自分が見ていないものが報道されている中で、それが本当に真実が語られているのか、記者という他人のフィルターを通して得た情報を自分たちで見直し、自らで考える必要が私たちにはあるのだと思う。また友人と話し合い、意見を交換することも大切だろう。話し合うことで自分とは違う視点で情報を見直すことができるようになり、さまざまな見方で情報を理解することができるようになるだろう。そして、報道機関は過剰な表現などがないか確認してほしい。これは情報によって間違った意識や行動を防ぐために必要だ。一人ひとりが情報を正しく伝え、理解する意識をもつべきだ。