よくある質問

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NIEに関するよくある質問にお答えします。このほかの質問は、NIE担当までお寄せください。

Q1 NIEに関心がありますが、方法が分からないのですが?
A初めて取り組む教師に不安があるのは当然です。そうした教師のために、47都道府県にNIE推進協議会があり、初心者のためのセミナーを開いたり、参考資料、実践事例集を用意しています。
協議会は教育委員会などの教育行政、学校、新聞社で構成され、ほとんどが地元の新聞社に事務局があります。まず事務局または全国紙の総・支局に相談してください。
また、ほとんどの都道府県にはNIEアドバイザーがいますので相談してください。新聞協会も相談者を紹介します。
Q2 NIEを始める心構えとしてどんなことがありますか?
ANIEに関する多くの出版物、資料が発行されています。NIEについて知り、 NIEを通して子どもたちになにを伝えるかを明確にする必要があります。 そして、新聞ができるまで、新聞の役割、新聞記者の仕事など、新聞についての知識を持っていれば、スムーズにスタートできるでしょう。新聞社見学や記者派 遣をお勧めします。
言語力育成を骨子とする新学習指導要領によって、NIEに対する同僚教師や保護者の理解が得られやすい環境になりました。 グループや学校ぐるみで取り組めば、授業研究や役割分担ができ、より効果的なNIEが可能になります。
多くのNIE実践教師が集うNIE全国大会、地域のNIE推進協議会や新聞社が開くセミナー(トップページ参照)に参加して他校の仲間をつくることも有効です。
Q3 年間指導計画の中で、どんなスケジュールを組み立てれば効果的ですか?
A学年や児童・生徒のNIE経験にもよりますが、新聞協会のNIE実践指定校の例でみてみましょう。
実践1年目の学校には早くて5月から地元紙、全国紙の複数の新聞が届けられます。その時に、いきなり実践に入れば戸惑いもあるでしょう。そこで、実践のトレーニングのために、あらかじめ学校や子どもの家庭で購読している新聞を利用して、新聞に慣れる授業をしてみましょう。
新聞にはどんなことが掲載されているか、政治や経済、国際、文化、スポーツ、社会、地域などのページ建て、コラムやマンガがあることを知り、スクラップの仕方を覚えておけば、スムーズな展開ができます。
そして、夏休みの課題として、あるテーマを与えてスクラップと簡単な感想や意見を書く練習させるのも効果的です。
Q4 教材に使う新聞記事の選び方は?
A新聞活用の目的、学年によっても選び方は違うでしょう。どの記事をどのように活用するか、選択の幅があるのがNIEの特徴でもあります。大きく分けて(1)教師が記事を選ぶ、(2)児童・生徒が記事を選ぶ――というふたつの選択方法があります。
(1)は教科に沿って、記事を活用した方が子どもの理解に役立つと考えて教師が選ぶケース。例えば、環境問題の理解のために地球温暖化や、気象変動、ゴミ問題、動物の絶滅危惧など最新の情報、データを扱った記事を教材にすることが一般的です。
この際、地球環境と自分たちの生活がどのように結びついているか、担当記者から話を聞いて、学習の動機付けにする教師も多くいます。国際理解、情報、福祉・健康など多くの分野で教科連動型の新聞活用が行われています。
(2)は読解力や表現力を育成する目的で新聞を活用するケースで総合的な学習の時間で多用されています。これにも「楽しくなった記事」「ホッとした気分 になった記事」「悲しくなった記事」「疑問に思った記事」など教師がテーマを与えて、子供たちが記事を選ぶ方法と、特定のテーマを与えずに「一番関心を 持った記事」を選ばせる方法があります。
いずれもワークシートを用意し、「その記事を選んだ理由」「記事の要約」「記事への感想、意見」を書いて発表し、ディスカッションします。この繰り返し は子供たちの言語力を確実にアップさせます。当番を決めて、その日(または週)の気になった記事を朝の会などで3分間や1分間スピーチで発表する取り組み をしている教師も数多くいます。
Q5 小学校では何年生からNIEが可能ですか?
ANIEは発達段階に応じた取り組みができるので、1年生から可能です。幼稚園などで幼児期から新聞を使って工作をするなど工夫している例もあります。
もちろん、1年生のNIEは遊び感覚で新聞が身近にあること、新聞になじむことが目的です。紙面上での数字やカタカナ、漢字などの文字探し。さらに、ペットなどの動物や植物、四季、お祭り、スポーツなどの写真、またマンガも使えるでしょう。問いかけたり、先生がお話してあげたりしながら、子どもが楽し んで参加できる工夫をしましょう。
低学年から新聞に親しみ、ステップを踏みながら高学年、中学校、高校へと発展していくのが理想的です。
Q6 忙しい中で、他の教師はどのようにNIEに取り組んでいますか?
A「NIEには関心があるけど、時間がなくて・・・」というのが、教師共通の悩み のようです。小・中学校の教師は、業務以外の会議、事務・報告書類作成、保護者対応などに追われて いるのが実情のようです。授業研究の時間が確保できないのもうなずけます。
そうした中で、教育効果を認めてNIEに熱心に取り組んでいる教師が数多くいるのも事実です。共通しているのは、校長ら管理職がNIEに理解を持って後押しするケース、同僚教師とグループで授業研究を行い、役割分担しながら授業をしているケースです。
校長自ら新聞のコピーを手伝ったり、切り抜きボックスを作って授業に使えそうな記事の提案を呼びかけて、輪を広げている教師もいます。
校内の理解と協力が実践のエネルギーになっています。保護者の協力を求めてもよいでしょう。幸い、言語能力の育成に新聞活用を薦めている新学習指導要領は、そうした環境づくりに大いに役立つでしょう。
Q7 記者派遣(出前授業)はどのようにすればできますか?
A学校への記者派遣要請は年々増えています。情報社会の中で、情報教育や記者体験学習が教科に取り入れられていることと無縁ではありません。言語能力育成にNIEの手法を取り入れている学習指導要領によって、ますます派遣要請は増えることでしょう。
多くの新聞社が、出前授業を積極的に受け入れています。新聞の役割と新聞記者の仕事を子どもたちに知ってほしいからです。しかし、記者にとって日常の仕 事をぬって学校に行き、授業をするにはかなりの準備が必要です。事前に新聞社の派遣担当者に連絡した上で、以下の点に留意して要請してください。
(1)派遣要請は希望日の1か月前までに  (2)派遣希望日は第1希望から第3希望まで伝え、新聞社に選択の幅を  (3)希望する話のテーマと目的を明確に  (4)授業の時間、児童・生徒の人数、場所を  (5)授業する場所でパワーポイント、ビデオが使用可能かどうかを明らかに
Q8 「ファミリーフォーカス」という言葉をよく耳にしますが?
ANIEをきっかけに、「記事について友人や家族と話すようになった」と児童・生 徒の変化を指摘した教師が7割を超えています(新聞財団の効果測定調査)。この結果はNIEの大きな効果の一つを示しています。NIEの家庭版がファミリー フォーカスといってよいでしょう。親子の対話不足、家庭の教育力の低下がいわれる中、最近注目されている新聞活用の方法です。
難しく考える必要はありません。さまざまな児童・生徒が混在し、教科との連動や評価を視野に組み立てるNIEと違い、新聞記事を材料に、親子で一緒に考 え、話し合うことが大切です。その繰り返しによって、子どもの社会への関心が自然に広まり、会話の内容も深くなり、コミュニケーション能力も上達していく のです。将来の職業選択や生き方にも役立つでしょう。
それだけでも十分ですが、さらに家庭学習として発展させれば、子どもの「力」は一層つきます。(1)専用のノートを用意し、(2)関心を持った記事や写 真を片面に張り、(3)その記事や写真を選んだ理由、内容の要約、自分の感想や意見を片面に書く、(4)ノートの内容について親子で意見交換をする――と いう取り組みです。
子どもたちは疑問点を調べたり、文章にするために考えをまとめたり、表現方法を考えたりすることで、自ら力をつけていきます。大切なことは、子どもが「楽しみながら続ける」環境作りと、子どもの問いかけに一生懸命応える、あるいは一緒に考える親の姿勢です。
家庭での新聞活用が活発なフィンランド、韓国などがPISA型読解力の上位にあるのはうなずけます。新学習指導要領で強調されている家庭、地域との連携による教育の取り組みとして今後ますます評価されていくでしょう。
Q9 学習指導要領で、NIEはどのように位置づけられていますか?
A学習指導要領では、教育内容の改善事項の第一に「各教科等における言語力の充実」 をうたっています。
子どもたちの思考力、判断力、表現力等をはぐくむために、リポートの作成や論述といった知識・技能を活用する学習活動を各教科で行う言語能力の向上を力説しているのです。言語力がコミュニケーションや感性・情緒の基盤であり、学習の基本という認識があります。
そして、「辞書や新聞の活用や図書館の利用などについて指導」を求めた中教審の答申を念頭に、言語力を高めるための環境整備の重要性を明記しています。 その上で、新聞活用=NIEが言語力の育成に効果的であるという認識から、言語の力育成のペースメーカーとしての国語で、新聞作り、比較読みなどを具体的 に記述し、新聞活用を推進することを文科省が求めています。文科省は従来からNIEに理解を示しており、学習指導要領はNIE拡充のバックボーンになると 考えられます。
Q10 総合的な学習の時間が削減されましたが、NIEへの影響は?
A学習指導要領では総合的な学習の時間が年間35単位(週1コマ相当)削減されることになりました。
しかし、文科省は「生きる力」の育成という指導要領の骨格は不変であり、それを具現化した総合的な学習の時間の趣旨も維持しています。
その上で、教科の知識・技能を活用するという本来総合的な学習の時間に期待されている学習活動を、各教科の中で充実することを求めています。
NIE実践指定校を対象に行った09年の新聞財団(=当時)の効果測定調査では、「新聞を活用している教科・領域」は小学校の場合、国語が69%、社会が62%で、総合学習は60%です。
中学校では社会・地歴・公民31%、国語18%、総合学習25%、高校は社会・地歴・公民22%、国語17%、総合学習8%という結果です。NIEがすでに各教科の中で実践されていることを示しています。
こうした現状から、総合的な学習の時間は削減されたものの、各教科の中で言語能力の育成を求める指導要領の内容は、むしろNIEの環境にプラスになると考えられます。
要は各教科の中で、新聞活用によって言語力をどのように育成するか、教師の工夫が求められていると言えるでしょう。
Q11 PISA型読解力とは?
APISA(Programme for International Student Assesmentの略)は、生徒の学習到達度調査と訳されています。
国際社会のグローバル化に伴い、国際的に通用する人材を育成する教育もまた世界的観点から評価しようという経済協力開発機構(OECD)のプロジェクトです。知識と人材の国際競争の時代という背景があり、好成績の国の教育システムを参考にしようという目的があります。
調査は高校1年生(15歳)を対象に3年に1回行い2000年には32か国、03年には41か国、06年には57か国・地域、09年には65か国・地域が参加しました。単なる知識だけでなく、(1)様々なツールを効果的に活用する能力、(2)多様な社会集団で人間関係を作る能力、(3)自立して行動できる能力――を調査のポイン トにしています。
日本でPISA調査が注目されているのは、03年の調査で、読解力が前回の8位から14位に、数学応用力が1位から6位に低下したことにより「学力低下」が問題視され、「ゆとり教育」論争に発展したからです。
調査がペーパーテストだけであり、各国の教育環境に違いがあることなど、調査の評価に課題があるものの、文科省は「生きる力」育成を目指す教育目標とPISA型学力は重なるとして、学習指導要領改定の根拠にもしています。
Q12 PISA型読解力とNIEの関連は?
A発達段階に応じて新聞を活用するのがNIEですが、新聞を通して自分が生きている社会の動きを理解し、課題を知り、解決に向けて考え、話し合い、自分の意見をまとめ、表現する、というのがNIEの基本的な取り組みです。これは「自らの目 標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」というPISA調査の読解 力の定義とほぼ重なります。
NIEもPISA型読解力も、求めているのは知識の量だけではなく、課題に直面した際に、さまざまの知識を活用した自身の応用力であり、対応力です。考える力、判断する力、表現する力です。新聞を日常的に活用している国の子どもほどPISA型読解力が高いのは理由のあることなのです。
Q13 テレビやインターネットが普及している時代になぜ新聞なのですか?
A情報技術が発達した高度な情報社会だからこそ、活字メディアである新聞を活用する NIEが必要なのです。テレビは娯楽性と速報性、臨場感に優れ、インターネットは情報量と双方向性、利便性に優れています。一方、新聞は一覧性、詳報性、 解説性、記録性などの特徴があります。
情報社会である現代社会では、さまざまなメディアから得た情報を、自分で取捨選択しながら生活しなければなりません。各メディアにはそれぞれ特徴がありますが、情報の命はなんといっても「信頼性」です。
NIEは各種調査でもっとも信頼されている新聞を材料に、情報を吟味し、読み比べることで多様性を知り、考えることで自分の意見を構築し、表現力=発進力を培い、情報社会を生きる力量を高めることができるのです。
スピードを身上とする新しいメディアに対し、NIEは立ち止まってじっくり考えることを求めています。こうしたNIEの必要性と重要性が認知されたからこそ、研究者と実践者による「NIE学会」が発足したのです。

赤池 幹(NIEコーディネーター=当時)(2011年10月)